炭鉱の抜け穴

不可解なことの覚書 チラシの裏

気分

 サリンジャーの『ナインストーリーズ』で、母親がほっそりとした女王のようなきれいな手で、たばこを吸うシーンがあったような。あのシーンが印象的で好きなんだけど、朧になった記憶で、気分だけは、そんな鋭角的な刻のある日。実際の手は、そのような形には程遠く、煙草も吸ったりしないのだけど。

 さすがにのんきな西の人も、旅立つときの近い若い人から、あれはひどいと気を付ける意識が表面化しつつあるのかと思う出来事もあり、書いては消し、そもそも現れる前に消える文字が多くなり、かといって、一方で湿気の多い曇り空の中を緩慢に進み、なくてはならない日常がつづく。それも大事だが、この気分の乖離は。

 まだ、事故が起こる前に、満員の列車が事故を起こし、たくさん子供が乗っていて助け出さなければと、必死だった夢を思い出す。そんな善人でもないはずなのに。その場にいれば本能的な行動なのか。それでもみんな助かったのかよく覚えていない。

 

 あったことがなくても、あなたがいてくれてよかった、という思いと、なぜこうなったんだろうとくりかえしと、でもやっぱりなくてはならない必要だと、「ねえ、覚えてる、地球に転生する前のあの星で、角のアイスクリーム屋さんで、よく見かけたよね。あったよね。」っていつか伝えてみたい。

 

 それでも、前はあまり食べなかったのに、たまになんだか食べたくなる、産地を少し気にしてチーズを買って帰る。そんな日。